上田会計レポート

(資料提供 MMPG)

    当社の顧問会計事務所、上田公認会計士事務所より
                    
    医院経営についての、ワンポイントアドバイス等をお届けいたします。
 

VOL.31                                                                   

     

    

    《他院見学や研修の目的を明確にするためには


■他院見学のスタッフの多くは受身の姿勢



 私の医院に時々他院からスタッフの方が見学に来られる。現役で、それも数年の経験のあるスタッフの方々が来られるときはこちらも大変緊張する。受け入れるにあたり、一体何を求めて見学にこられるのかを問う。大体の場合スタッフの方々は、「○○○してこいと言われました」と受身である。さて院長は、というと「仕事はできるのだけど、それ以外の事がね・・・」。それ以外の事?曖昧な表現に、後はそのスタッフを観察していくしかないなと思うのである。


 ある日、見学にあたり事前にスタッフから電話があった。「このたびお世話になります○○医院の△△です。お伺いする日の必要物を教えてください。」大変丁寧できちんとした電話応対に、この応対のどこに不満?そう思わずにはいられなかった。必要物について告げ、そして私からあるお願いをした。「あの、せっかくお時間を割いて見学に来られるわけですから、きちんと目的を持ってきてくださいね。せっかくの時間を無駄にしないようにしてください。」そう言って私はひとつだけ宿題を出した。「何を見たいのか、何を知りたいのか、何を得たいのか、それを難しい言葉でなく、自分の言葉で結構ですので書いてきてください。」「は、はい、わかりました」。さっきまで流れるように話していたその彼女の声が、急にトーンを落とした。


 さて当日、2名のアシスタントの方が来られた。受け取ったレポートには、一生懸命考えたと思われるたくさんの項目が書かれていた。患者様との接し方、電話の応対、点数の上げ方・・・など。私はそのレポートを見て言った。「たった1日でこれだけの事を見ていただくのは難しいですよね。」そう言って赤のマジックで2本ずつ線を引いた。「あなたはこの2つの事に専念して見学をしてください。そして終了後、その事についてのレポートを書いてください。あなたは、これで・・・」彼女たちの表情が変わり、緊張感が一気に走った。初めて訪れる歯科医院に入ると、物珍しさが先立ち気持ちが散乱する。あれもこれもと気になって、目的が漠然としてしまう。これでは大きな効果は得られない。そこで、「緊張感を持つこと」そして「目的を明確にすること」で、確実に何かを得て帰って欲しいことを告げた。



■報告書には院長のコメントを


マンネリ化したスタッフやマンネリ化してしまった歯科医院のシステムに対して、何かを取り入れようと他院を見学させたり、研修会に参加させたりすることがある。しかし、研修に行くスタッフ自身が「行かされた」と思って出かける以上、期待している効果は得られないのだ。また、「行って来い」と送り出し、報告書を受け取るだけでは「報告書を提出すること」が研修の目的となってしまう。これでは、「せっかく行かせてやったのに、何も変わらない!」との評価を受けることになってしまうわけだ。これでは、時間を割いて研修に出かけたスタッフにとって、フラストレーション以外に何も残らない。

そこで院長先生にお願いしたいのは、スタッフの報告書に対して、先生の思いや考えをコメントとして書いてあげて欲しいのである。コメントの言葉は、口で言われるより心に残る。このコメントを使って、普段思っていることを伝えてみるのもいいと思う。レポートにコメントを書くのは、結構大変な作業である。しかし、これを書くことで、スタッフが1枚のレポートを仕上げるのに費やした労力と、その思いが伝わってくる。

1枚のレポート、先生のコメント。その紙面上におけるやりとりも、重要なコミュニケーション手段となっている。その手段を、是非うまく活用して欲しいと思う。

歯科衛生士 岩崎小百合